【坂道】櫻坂46 中嶋優月、乃木坂46 林瑠奈……大学での日常を発信するのはなぜか？　新時代のアイドルが映すリアル

アイドルとしてステージに立ち、華やかなスポットライトを浴びる日々と、キャンパスで友人と講義を受けたり、課題やレポートに追われる大学生としての落ち着いた日常。かつては両立が困難とされ、どちらか一方を選ばざるを得ないと考えていた人も多かったが、近年の坂道グループではアイドル業と学業を両立しているメンバーも多い。乃木坂46、櫻坂46、日向坂46のメンバーたちは、VlogやブログなどのSNS発信を通じて、“憧れの存在”としてのアイドル活動と“親近感のある”大学生としての姿をリアルに届けている。

櫻坂46の中嶋優月が2025年4月1日にグループ公式YouTubeチャンネル『櫻坂チャンネル』で公開した大学卒業記念のVlogは、まさにその象徴的な一例だろう。東京を中心とした芸能活動と、北九州市立大学への飛行機通学という過酷なスケジュールをこなす彼女の一日がリアルに映し出され、多くのファンが彼女の努力に胸を打たれた。

しかし、この動画がファンの心を掴んだのはその多忙な様子だけではない。大学での友人との自然な会話や通学路とも言える空港で食べるソフトクリーム、授業が終わって見せる安堵の表情といった、学生の何気ない日常が映し出されていたことが大きい。特別な存在として見られるアイドルが、「私たちと同じように頑張っている」という実感。それが、画面越しに彼女を見守るファンの心に深く響いたのだろう。

この“大学生Vlog”は、大学で映画の勉強をしているという乃木坂46の林瑠奈も投稿したことがある。彼女が公開したVlogには、講義を真剣に聞き入る姿や、自宅でMacBookを使って映像編集をする場面まで、学生生活が詳細に描かれている。大学の友人と一緒に乃木坂駅で自分の誕生日を祝うファンの掲示を見に行く場面では、応援を等身大の視点で受け止めていたようにも見える。きっと彼女は、それに背中を押されたのだろう。そこからすぐに乃木坂46としての仕事へと向かう姿には、目まぐるしくも充実した日々が垣間見える。

日向坂46の金村美玖もまた、日本大学芸術学部で磨いた写真表現をブログで積極的に発信している。彼女が撮る写真には、アイドルという職業の枠を超えた表現者としての視点が息づいており、「表現する姿そのものが美しい」とも感じられるような感性の豊かさが詰まっている。乃木坂46の矢久保美緒は、大学卒業の際に「テストやレポートに追われながらの活動は簡単ではありませんでした」とブログに綴っていた。楽しいだけじゃない学生生活、時間のやりくりに追われる日々、不安や葛藤を抱えながらも一歩ずつ進んできた過程。そうした経験を隠さずに打ち明けたからこそ、同じような環境である者たちは「自分も頑張ってみよう」と思えるきっかけになったのではないだろうか。

なぜ今、学生生活にフォーカスした発信が注目を集めているのか。一つは、アイドルとファンの関係性が大きく変わったことが挙げられるだろう。かつては遠い世界の存在のように感じられたアイドルという存在が、今ではSNSや動画での発信を通じて、同じ時間を過ごしているような“距離感”にいる。画面の向こうにいる彼女たちが、朝早く起きて学校に行き、講義を受けて、帰り道に好きなパンを買って帰る――そんな日常の延長線上に、ライブやパフォーマンスがあると知った時、ファンは「自分にもできるかもしれない」と思えるようになるのかもしれない。応援することが、誰かを支える喜びであると同時に、自分自身の背中を押してくれるのだ。

アイドル自身も、その反応をきっと感じ取っているのだろう。中嶋は「いい時ばかりじゃないけれど、そんな時間もいいことにつながるのかもしれない」と語っていたが、彼女たちが見せているのは、ただのVlogではない。そこには、“夢”と“現実”のどちらも手放さずに進むという強い意思が宿っている。

もちろん、その両立は簡単なことではないだろう。中嶋や林のように大学の授業を受けながら芸能活動を続ける生活は、体力的にも精神的にも厳しいものだと想像する。実際、学業との両立が困難でグループや学校から離れるという選択をするメンバーもいる。しかし、そうした現実を受け入れながらも、自分の夢や可能性のために挑戦を続ける彼女たちの姿勢は、同じように日々を頑張っている多くのファンにとって、大きな希望となっているはずだ。

ステージで輝く時間も、キャンパスでの日常も、どちらも等しく価値あるリアルな瞬間だ。坂道グループのメンバーたちが私たちに見せてくれるのは、「二つの道を両立させることは不可能じゃない」と、まっすぐに伝えてくれる、新しい時代のアイドル像である。