バトルロワイアル ~6期生編~
船の甲板に立つ六期生たち。
潮風が頬を撫で、波の音が遠くから響いている。
森平は不安そうにキョロキョロと辺りを見渡した。
森平
「ねえ、これ、どこに向かってるの?」
その隣で愛宕がゆったりと微笑む。
愛宕
「ゆうなちゃんの企画で、無人島に向かってるらしいよ」
森平
「ああ、ゆうなちゃん、無人島サバイバル企画やりたいって言ってたもんね」
その会話を聞いていた長嶋が、ぱんっと元気よく手を叩く。
長嶋
「大変そうだけど、面白そう!」スポンサーリンク
やがて船は島の小さな港に着岸し、六期生たちは緊張と期待が入り混じるなか、甲板から降り立った。
浜辺に立った鈴木が、一歩前に出て周囲を睨み据える。
その眼差しには、いつものおっとりした彼女の面影はなかった。代わりに、鋭い威圧感が場を支配する。
鈴木
「よォ~し、みんな、静かにしろォ……」
ざわめいていた一同が、その声にピタリと動きを止めた。
「お前ら、全員選ばれたんだよ。これから始まるのは――特別な“修学旅行”だ。普通じゃ絶対に味わえない、な」
その言葉に、誰かがゴクリと唾を飲む音がした。
鈴木
「今日はみんなに、ちょっと殺し合いをしてもらいます。名付けて――“バトル・ロワイヤル”!
最後までこの島で生き残ったヤツが、選抜メンバーだ!」
空気が一変する。
「そんなの冗談でしょ!? ねえ、ゆうな、ウソでしょ!?」
思わず声を上げた大越。動揺がその声ににじむ。
しかし、鈴木はニヤリと唇を吊り上げた。
鈴木
「冗談言ってる場合かよ……本気でやれ。さもないと……お前ら全員、ここで終わりだ」
その瞬間、彼女の目つきに一瞬だけ揺らぎが走った――けれど、それに気づいた者はいなかった。
「ルールは簡単。1人になるまで戦え。
首には爆弾付きのチョーカーをつけてる。反抗すれば――ボン、だ」
愛宕
「こんなの……私たちに戦えっていうの……!?」
少女たちの間に広がるのは、信じられないという空気だった。
けれど、その中にわずかずつ、生存本能が芽生えはじめていた。
小津は表情を引き締め、情報を整理しようと頭を回転させる。
矢田は体を震わせながらも、周囲の様子を注意深く観察していた。
小柄な身体の奥で、心臓がバクバクと暴れていた。
「無理だよ」「逃げたいよ」……耳元で、弱気な自分が囁いてくる。
だけど彼女は思い出していた。
白い衣装。まばゆいライト。割れんばかりの歓声。憧れのセンター。
小さな頃、テレビの向こうに見た乃木坂の姿に心を奪われた日々。
こんなところで立ちすくんでいて、夢なんて掴めるわけがない。
川端はギュッと拳を握りしめ、一歩、前へと踏み出した。
「……私は、負けない。絶対に生きて帰る。あの夢のステージに、もう一度――」
その言葉が空気を震わせた。
誰かの喉が鳴る音が、静寂の中で異様に響く。
その場にいた六期生たちは、川端の言葉に背を押されるように、
自分の心の奥底に問いかけ始めていた。
「私は、どうする?」「どう生き残る?」「誰を信じて、誰と戦う?」
最初の一歩を踏み出す音が、それぞれの心の中で、確かに鳴りはじめていた――。
島の中央に設置されたスピーカーから、突如けたたましい警報音が鳴り響いた。
「ウウウウウ――ッ!!」という機械音が、無人島の空気を震わせる。
緊張が、その場にいた全員を一気に襲った。
次の瞬間、メンバーたちはそれぞれ支給された荷物を抱え、四方へと散っていった。
誰が敵で、誰が味方かも分からない。
それでも――走らなければ、立ち止まれば、それだけで死ぬかもしれない。
誰もが心の奥で、自分に言い聞かせていた。
「ここで止まったら、終わりだ」
森の中。
木々が鬱蒼と生い茂り、昼間だというのに辺りは薄暗かった。
その木陰に、小さく身を縮める人影があった。
それは、愛宕 だった。
彼女は草の上に座り込み、腕を抱いて震えていた。
無理に作った笑顔も、もう保てない。
愛宕
「なんでこんなことに……帰りたい……」
涙がこぼれそうになったそのとき――
カサリ、と背後の茂みが揺れる音。
愛宕がビクリと肩をすくめた。
それは、瀬戸口 だった。
警戒心に満ちた目で辺りを見回し、声を張り上げる。
瀬戸口
「……誰!? そこにいるの、誰!?」
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まるでファンから呼ばれたときのように――条件反射のように立ち上がってしまった。
愛宕
「ここね、ここやで♡」
笑顔すら浮かべてしまう。
この異常な状況の中で、それはある意味“アイドルとしての性”だった。
どんなときでも愛想よく、笑顔で応じる――その癖が、命取りとなった。
その一瞬後だった。
ドンッ!!
―愛宕、死亡―
森の小川のほとり、瀬戸口がひと息ついて休憩していた。
澄んだ水のせせらぎが耳に心地よくて、ちょっとだけ緊張がほぐれた。
けど、その顔には深い影があった。
瀬戸口
「さっき……ここねを撃ってしもうた。ごめんね、ここね……」
震えよる手で自分の胸を押さえながら、そっと呟いた。
瀬戸口
「私、なんであんごつなことしちまったんやろ……」
その瞳には後悔と悲しみが満ちていた。
小津
「せーの……小津じゃ〜〜ん!!
瀬戸口
「えっ、小津ちゃん!?」
ピカッ!
一瞬にして、瀬戸口の姿は熱々の激辛麻婆豆腐に変わってしまった。
小津は得意げに箸を持ち上げ、にっこり笑って言う。
小津
「いただきます♡」
パクッ。
静寂に包まれた森の中、瀬戸口の声はもう聞こえなかった。
―瀬戸口、死亡―
広場を増田が必死に逃げ回っていた。
額には汗、表情は必死そのもの。
その頭上。高所の建物の縁に立つ影――弓を構える長嶋がいた。
長嶋
「逃げてもムダだよ、みりねぇ!」
鋭い矢が空を裂く。しかし――
☆増田、得意(自称)の反復横跳びで回避中!☆
左右に跳ねる増田を前に、矢はまるで自ら進路を変えたかのように空を裂いていく。
表情は汗だくなのに、どこか満足げだった。
増田
「どうですか、速いですよね…?」
「なんで当たらないの…!?」
そこに、不気味な電子音とともに現れる影。
巨大な兵器を抱え、冷静に操作する姿――それは海邉だった。
海邉
「……ロックオン完了。ターゲット:マスダ」
ボンッ! 煙を引きながら、一直線に空を裂いて飛んでいく。
増田
「落下地点……パソコンで……計算して……!」
カタカタカタカタ……
増田
「……え、IPアドレスが……違う!? え、あれ? ちょ、Wi-Fiが――」
ドカーン!!
爆発が広場を揺らし、土煙が空高く舞い上がった。
―増田、死亡―
引用元:https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/nogizaka/1749396873